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洋風を気取った木製のドアを、ジッと見つめること約三十秒。
遠慮がちにドアベルが鳴り、ゆっくりとドアが開かれる。
外から入ってきたのは、見慣れた人物。
保村 明子(ほむら あきこ)、二十七歳。
学生時代からの知り合いで、わたしの数少ない友人である。
小さく手を挙げてこちらの居場所を認識させると、明子はすぐに笑顔を見せ歩み寄ってきた。
上下白のスーツに白のバッグ。
彼女は少し遅めの昼休み。
コンピューター関連の会社で事務をしているのは知っているが、どんな仕事内容をこなしているのかまでは詳しく聞いたことはない。
とりあえず、自分には無理な仕事をしている、と言う解釈だけを勝手にしている程度だ。
「やぁ、お待たせ。時間通り来れて良かった」
向かい側に腰を下ろした明子が、にこやかにそう告げてきた。
「二分三十秒は遅刻してるよ。その姿、真夏には見たくないな。全身真っ白で眩しそう。絶対目に悪いよ。見てる方が」
遠慮なく指を突きつけて、ひとまず思ったことを言ってみる。
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