†プロローグ†

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「うん。開口一発目の毒舌をありがとう。あ、コーヒーと……イカスミパスタお願いします」 通い慣れている店なのか、注文を聞きにきたウエイトレスにメニューを見ることなく告げて、明子はバッグの中から手帳を取り出した。 唐草模様のそれをパラパラと捲る友人に、私は低い声で問いを発する。 「明子、……あんたあんな気持ち悪いものよく食べる気になるね」 「ん? 気持ち悪いって、何が?」 「今自分が頼んだやつだよ」 「パスタ?」 小首を傾げる友人に、こくりと頷く。 「見た目からして、もう食べ物に見えない」 イカスミパスタ。 初めて見た瞬間、一発で嫌いになったメニューの一つだ。 個人的には、エスカルゴに匹敵する。 「まぁ、味を知らない人はそうかもね。後で一口食べてみなよ。虜になるかもよ?」 「冗談はやめて。絶対に食べないよわたしは」 苦渋を浮かべて反論し、短く息を吐き思考を切り替える。 「まぁ良いや。それで、今日は何の用があって呼んだの?」
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