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「うん、それなんだけどさ、楓来月の十五日暇?」
パラリと手帳を捲る明子の手が止まる。
果たして何を見ているのか、視線はその手帳に落ちたままでこちらを見ようとしていない。
「来月? さぁ、まだそこまでの予定はわからないよ。その日がどうかしたの?」
「……うん、実はねこの日久々に合――」
「あ、合コンなら行かないよ。先に言っとく。パス」
「……」
嫌な予感が湧きあがり反射的に出鼻を挫きにかかると、ぎこちない笑みを湛えた明子の表情が固まった。
「ねぇ楓、私まだ何も言ってないんだけど……」
「うん、そうだね。でも図星でしょ? 話す手間が省けたわけだし、ラッキーじゃん」
素知らぬ風を装って告げ、わたしはコーヒーを一口啜る。
そこから、何故か約三分ほどの沈黙が生まれた。
この三分の間にどんな思考を展開したのかは定かでないが、明子はどこか牽制するようなニュアンスで会話を再開してくる。
「え? ちょっと待って。楓前に言ったよね? 機会があったら参加してくれるって。あれ嘘じゃないでしょ?」
どうやら――何となくわかってはいたが――合コンのスケジュールが書かれていたらしき手帳をパタンと閉じ、明子は僅かに身を乗り出してきた。
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