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「うん。でも、そのとき言わなかったかな。気が向いたらって。今回は気が向かないから行かない。それだけ」
「うわぁ、何この子」
心底裏切られたような表情で、明子はポスンッと力なく背もたれに寄り掛かった。
「……じゃあ、いつ気が向くのよ?」
数秒の沈黙を挟み、胡散臭げな声を友人は漏らす。
「さぁ、いつかな? ちょっとよくわかんない」
「わかんないって……」
信じられないものを見るような目でわたしを凝視する友人と真正面から視線を合わし、わたしは若干呆れた口調で言葉を返した。
「て言うかさ、明子、わたしたちもう二十七だよ? そろそろ合コンなんてやめて、真面目に生きたら?」
また一口、コーヒーを啜る。
さすがにもう冷めてしまい、あまりおいしく感じない。
明子の注文が運ばれてきたら、新たに頼もうか。
そんなことを考えるわたしの耳に、明子の低い呻きが滑り込んでくる。
「楓さ、私のこと追い詰めようとかしてる? グサッときたよ今の一撃。三年後に聞かされてたら百パー致命傷になってたと思う」
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