-Prologue-

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************* 「第十三区の状況を報告せよ」 プロジェクターの向こうから、 機械音と間違える程の冷徹な声が聞こえる。 「は・・・。 現在、12歳から15歳のプロトタイプT-02グループが、 約2000人、養育されています」 ただし、今この時までは・・・だ。 タイムスケジュール通りであれば、 第十三区もそろそろ刈入れ時だ。 だから次に淡々と告げられた内容に、男は何も思わなかった。 「それでは、12月25日、1300を持って、 回収作業を開始する・・・」 ************** 昔は人間が10ヶ月弱、 子宮内で胎児を育てていたらしい。 そして、激烈な苦痛と共に、 その胎児を産み落としたという・・・ まるで、獣のように。 今現在は、そのような野蛮な習性からは、 人類は別れを告げた。 子宮の代わりに、清潔なガラスケースの中で、 子供たちは誕生するのだ。 そして、これは一部の人間しか知らない事実だが、 そのうちの一部の胎児たちの遺伝子を元に、 意図的にクローンが作られている。 これは、人類の可能性を広げ、 我が国に営利をもたらすための試みだ。 作られたクローンたちには、 個別に様々な遺伝子操作が行われている。 もちろん、コピーされた子供本人も親もその事実はしらない。 そして国内のあちこちにある、 「児童養護施設を兼ねた学園」の中で、 親を知らず、ほとんど外界と触れること無く そのクローンたちは生活をしている。 そして子供たちには、一定の教育期間を経て、 「収穫」の時期になると、「刈入れ」が行われる。 より強い、理想的な遺伝子を持ったモノを選別するため。 または、より強靭で優秀な頭脳を持ったモノだけを残すため。 そういった者たちを軍事利用するために、 1%の勝者を選ぶ『軍事訓練』が行われるのだ。 ただ、政府が待ち望んだような、 究極状態で発動すると予想された 突然変異種はまだ現れていない・・・。 それがこの実験の最大の目的ではあるのだが・・・。 **************
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