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・・・トモくん、なんでそんな怖い顔をしているの?
なんで・・・そんな泣きそうな顔をしているの?
いつも優しい顔で私を見つめる微かに茶がかった瞳は、凄く怒っているような、痛みを必死でこらえて居るような苦しそうな、・・・そんな見たことのない表情をしている。
地面に手のひらを付き四つん這いの姿勢で動けない私から、
ポタポタという、得体のしれない音がした。
床に堕ちる、紅い粘度の高い雫。
それがどこから溢れてきているのか、そしてその雫の正体が何であるのか、私には理解できなかった。
お腹が、凄く・・・熱くて。
熱い鉄の棒を突っ込まれたように説明の出来ない感覚と、
脳をガンガンと叩きつけるような何かが私を攻め立てる。
ドクンドクンと全身が激しく血流を送る。頭の芯がぼぉっとして・・・
怖い。その瞬間初めて思った・・・。
だから、私は唯一信じられるトモくんへ、もう一度指先をのばそうとする。
その私の手はすでに、真っ赤に濡れている。
ああ、トモくんがお祭りで買ってくれた指輪が汚れちゃってる。
それが何より悲しくて、私はそれを必死に拭おうとその指先に体を寄せようとする。
「ばかっ、動くなっ」
トモくんが私の汚れた指先を躊躇うこと無く捉え、
一斉射撃の引いた間隙を縫って、
私を抱き上げて、一番近い建物に駆け込んでいく。
みるみるうちにトモくんの白いシャツが真っ赤に染まっていく。
私を必死に抱えながら走るトモくんの呼吸が、乱れる。
でも、その乱れ方は、普段のそれではなくて、
ううう・・・ううう・・・というような嗚咽のような響きが時折交じる。
飛び込んだ先は体育倉庫だったらしい。彼がそっと私をマットの上に横たえる。
「かなこ・・・死ぬなっ」
私の手を必死につかむトモくんの手は真っ赤に彩られている。
私は、トモくんがどこを怪我したのだろうと、必死に彼の体を確認する。
「ばか! 怪我したのはお前なんだよ!!!」
言われた瞬間に、先ほどの光景が脳裏に蘇った。
私達の穏やかな学園生活を地獄に追い込んでいった、
アレ、が私のすぐ後ろに迫り、
必死に走り続けていた私とトモくんの間の手が、
冷たい汗で滑って、私は転んでしまったんだ。
次の瞬間、アレが冷たい紅いビームで私を貫いた!
そこまで思い出した瞬間に、
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