-Prologue-

5/8
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
お互い、ふぅ・・・と深い、安堵の溜息をついた。 トモくんは、撫でるようにして、アラームを止める。 「・・・今日も・・・生き延びれたね・・・」 ぽつり、と私が言うと、トモくんが小さく笑う。 「・・・まずは、かなこが無事でよかった・・・」 二人でコツンと額と額を触れ合わせる。 「とにかく、今日の飯を確保しに行かないと・・・」 何があったかわからない。けれど、アラームの時間まで逃げ延びた、 ということは、一日分の命は保証された、ということだ。 トモくんがふらりと立ち上がると、 ゆらり、と黒いモヤの様なものがその場に湧いてくる。 攻撃の時間は終わったけれど・・・ 私とトモくんは警戒に身を硬くしてソレを見つめている。 「・・・みぃつけた・・・」 クスクスと笑う声が聴こえる。私は眉をしかめ、その姿を睨みつける。 そんな変な現れ方をするのは、 学園の『魔女』しかいない。 ゆらゆらとかげろうの様な姿は、あっという間に実体化していく。 その怪しげな姿や、不気味な現れ方、 そしてその言動が、学園のすべての人間に忌み嫌われている。 実際その姿を見たものはほとんどいないというのに。 「ついに、見つけた。オマエを!」 真っ黒な衣装に包まれた姿は、噂で聞いていたよりはずっと小さい。 深いフードの奥から漏れる声は、しゃがれて老婆のようだけど・・・。 ケラケラと声高く嘲笑う。 しばらく笑って、そのフードの中から、 じっと私の顔を覗きこんでくる。 「・・・オマエは選ばれしモノだ。 この腐った学園・・・いや、世界を救うのだ!」 フードの奥から真っ赤な瞳が私を捉える。 私の腕を掴んだその手は、幼い子どものそれのようで・・・。 「何を・・・言っているかわからない」 思わず、その不思議な圧迫感に、私は一歩後ずさりをした。 はらり、と魔女はそのフードを取り払い、 真っ赤な虹彩を私に向けて、 私の手を捉え、私の下腹部に手を伸ばし、 指先で傷を探るようにぐりぐりと動かす。 「何するんだよっ!」 呆然としていた、トモくんが私の体をとっさに魔女からかばうようにする。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!