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徐々に夜の帳がおり、桜がライトアップされ始めた。
昼間の桜は明るく清楚な雰囲気だけど、下からライトアップされた夜桜は一転して妖艶な雰囲気を醸し出す気がする。
アルコールの酔いも手伝って、フワフワとした気分のまま、妖艶な美しさでたたずむ夜桜に見惚れていると、どこからか音楽が聴こえてきた。
「お。いよいよ始まるみたいだな」
色んな人に掴まっては連れまわされていた亮平が、真っ赤な顔をして戻ってきた。
どうやら例のプロジェクションマッピングが始まるらしい。
あー、ワクワクする。
実物を観るのは初めてなので、プロジェクションマッピングがあると聞いて、私は密かに楽しみにしていた。
でも・・・・・・あれ? おかしいな。
公園の近くにある城に映すと聞いていたのに、その城の方を見てもそんな気配が全く感じられない。
「ねぇ、お城に映すんじゃないの?」
「ああ、どうやら今年は違うらしいぞ。ほら、あれ」
亮平が指さしたのは、公園を挟んで城と反対側にある大通りに面した廃ビルだった。
もうすぐ取り壊して再開発されることが決まっており、せっかくなら最後に有効活用しようということになったらしい。
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