第18章

22/23
前へ
/473ページ
次へ
「ねぇ、麻衣子」 「ん?」 「私ね。亮平とこのまま進んでもいいかな、と思ってたんだ。つい最近までは」 「……じゃ、今は?」 「停滞……いや、“揺り戻し”状態かな」 「どういうこと?」 我ながら言い得て妙だな。 でも、事情を知らない麻衣子は怪訝そうな顔をしていたのが、なんだか可笑しかった。 「……実は、一週間前の会社の花見の時、あっちゃんと会ったの」 「えっ!?」 「あー、『会った』は語弊があるか。正確には、道路の向こうから私を見てたのに気づいただけ。すぐ去って行ったけど」 「………」 「それからね、なんでこっち見てたんだろうとか、気になって仕方なくて。冷めて音信不通になったんなら、きっとガン無視するはずなのに、なんでだろうって」 「………」 「勇気出して、もう一度、電話かけてみようかとも思った。だけど、私の単なる思い過ごしかもって思ったら、怖くて発信ボタン押せなくて。向こうから何も言ってこないってことは、やっぱりその程度なんだろうなって。そう思う一方で、だったらなんで、立ち止まって私をずっと見てたんだろうって。その無限ループ」 私の乾いた笑いだけがそこに落ちた。 「だから、自覚した。やっぱり私、あっちゃんのこと、吹っ切れてないんだって」 「まだ好きってこと?」 「どうなんだろうね。単に、あんな切られ方だったから、執着してるだけなのかもしれないけど」 麻衣子に打ち明けたら、幾分かスッキリした。 一方で、麻衣子は神妙な顔つきをしている。 「……ねぇ、あれから―――音信不通になってから、まだ一回も連絡ないんだよね?」 「うん。だから猶更、ワケが分かんなくて」 麻衣子はジッと何かを考え込んでいる様子だった。 「……あのね。実は、理央に言おうかどうしようか迷ってたことがあるんだけど……」
/473ページ

最初のコメントを投稿しよう!

405人が本棚に入れています
本棚に追加