女郎瀧

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 それから大分走った時のことです。 「なかなか着かねぇな」  竜也君が呟きました。 「やっ、そろそろだと思う。もう少し行った辺りに大きなカーブがあるらしいんだけど、その終わりら辺に入口の看板が立ってるんだって。ただ車止められないみたいだから一回通り過ぎてどっかに止めよう」  浩志君が答えました。  それから数分もしないうちにそのカーブに差し掛かりました。浩志君が言っていた通り、カーブの終わりら辺には『女郎瀧』と書かれた看板が立っていました。カーブのため一瞬しかライトが当たらなかったその看板を、私達は誰一人見落とすことはありませんでした。 「ついに来たか!」  竜也君は興奮しているようでした。 「おい、カーブ抜けたら直線みたいだから、そこで路肩に止めようぜ」  敦也が言いました。  竜也君は敦也の指示通り車を停車させました。時計を確認すると午前2時を少し回ったところでした。 「うおー雰囲気あるねー」  浩志君は高揚したように言い、わざわざ用意してくれていた4人分の懐中電灯を全員に手渡しました。  車を降りると、そこは物音一つしない暗闇の世界でした。草木も眠る丑三つ時とはよく言ったものです。  懐中電灯の灯りを頼りに歩いて行くと、すぐに先程の入口に着きました。この辺りまで来ると、少しずつ水の音が聞こえるようになってきました。この先に女郎瀧があるということなんだと思いました。  入口から先は、左右を草木に囲まれながらも人が二人並んで歩けるくらいの道幅がありました。竜也君と浩志君が先に行き、敦也と私が後から付いて行く形になりました。  入口からしばらく進んでいくと少し開けた所があり、先程浩志君がしていた説明とほぼ同じことが書かれた案内板と、その横には小さな文字でたくさんお経のような言葉が書かれ、最後に大きく『有縁無縁諸精霊供養』と書かれた高さ4メートル程の柱のような慰霊碑が建てられていました。  浩志君はそれをデジタルカメラでしきりに撮り出しました。そんなに何枚も撮って何の意味があるのかと思いましたが、浩志君的には「撮れば撮るだけ心霊写真の確率が上がる」だそうです。
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