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ふと気が付くと竜也君の姿が見えなくなっていました。
「あれっ、タツどこ行った!?」
敦也はそう言い、辺りを見回しました。
それに気付いた浩志君も撮影の手を止め、キョロキョロと周囲を見回しています。
ガサガサッ ガサガサッ
草むらが不気味に物音を立てました。
「えっ…!」
私は敦也の腕にしがみ付きました。
私達3人は物音の立った方向に懐中電灯を当て、息を呑みました。
「ワーーーッ!!」
と叫びながら突然草むらから何かが飛び出してきました。
「きゃあ!」「うおっ!」「ハ、ハァー…」
私達3人は一斉に悲鳴をあげました。
ですがよく見ると飛び出してきたのは竜也君でした。竜也君は私達を脅かそうとしたらしく、3人の反応を見てお腹を抱えて笑い出しました。
「浩志お前 ハ、ハァー… じゃねーよ!ハッハッハッハッハッ!!」
「しょーがないじゃん!めっちゃビビったよ!」
竜也君は浩志君の声にならない悲鳴がツボに入ったようです。
「タツお前タチ悪りーよ。いきなり消えたかと思えば脅かすとか言ってさー」
敦也が言いました。
「ちげーよ、ションベン行ってたんだよションベン。さっきからめっちゃしたかったんだよ」
「タッションなんかやばいよ。ここは他の心霊スポットとは違うんだから!」
浩志君が注意しました。
「うるせぇよ浩志!とにかく ハ、ハァー… じゃねーよ!ハッハッハッハッ!」
そんな竜也君の言葉を聞いて敦也も少し笑っていましたが、私はびっくりし過ぎて笑う余裕なんてありませんでした。
怖い中にもそんな和やかな空気が流れたその時でした。
ズズズズッ ズズズズッ
先程とは違い何が擦れるような音が聞こえ始めました。
「えっ、えっ……」
私はどこからその音が鳴っているのかがわからず、キョロキョロと周囲を見回しました。
「どうしたんだよ?」
敦也が私を見て言いました。竜也君と浩志君も不思議そうに私を見ています。
「みんな聞こえないの?」
ズズズズッ ズズズズッ
どんどん音は近付いてきます。
ズズズズッ ズズズズッ
「えっ、えっ…やだっ」
ズズズズッ ズズズズッ
「だからどうしたんだよ!?」
敦也は強い口調で言いました。
ズズズズッ ズズズズッ ズズズズッ ズズズズッ
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