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私は恐る恐る足元の崖下を覗き込みました。
「はっ……」
私は息を呑みました。覗き込んだ先には崖の岩肌をよじ登ってくる何人もの女郎が見えました。私は腰を抜かし尻餅をつきました。そのまま崖の反対方向に後退りしようとしましたが体が言うことを聞きません。その時でした。
背後から私の肩を掴む強い力を感じました。とっさに振り向くとそこには敦也が立っていました。
「おいっ、大丈夫かっ!?」
「あっ、あつ…あつ」
「わかった!とにかくいいから逃げるぞ!!」
敦也は私を抱き上げ、そのまま元来た道を走りました。途中竜也君と浩志君がこちらに向かってきているのに気付き、敦也はこう叫びました。
「タツ!浩志!とにかく車まで走れっ!!」
その声を聞いた2人も踵を返して走り出しました。
「何があったんだよ!敦也!!」
「いいから走れっ!とにかく走れっ!!」
走り続けると入り口の看板が見えてきました。あと少し、あと少し。
私達は必死に車まで走りました。
そして、なんとか車に逃げ込みました。ですが、まだ安心はできません。
「タツ!早く車出せっ!!」
「わかってる!!」
竜也君は急いでエンジンを掛けようとしました。
ギュキュキュキュキュッ ギュキュキュキュキュッ
ですがなかなか掛かりません。
「何で掛かんねぇんだよ!!」
竜也君は必死です。
ギュキュキュキュキュッ ギュキュキュキュキュッ
「うわっ!!」
浩志君が叫びました。
「何だようるせぇ!!」
竜也君は苛立ち大声を出しました。その時でした。
ドンッ
ドンッ ドンッ
ドンッ ドンッ ドンッ
ドンッ ドンッ ドンッ ドンッ ドンッ ドンッ
ドンッ ドンッ ドンッ ドンッ ドンッ ドンッ
何者かが車のボディを叩いているようです。その数はどんどん多くなっていきます。
「掛かれよバカヤロー!!」
竜也君は必死にエンジンを掛けながら力一杯ハンドルを叩きました。すると、
ブォォォォォン!!
勢いよくエンジンが吹き上がりました。
「早く早くっ!!」
「おうっ!!」
竜也君は急いで車を発進させました。
それから私達はとにかく必死で峠を下りました。
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