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Moon Rising
「はぁ……はぁ……」
森林を少年が駆けている。
抱えた腕には、その森林で採取したであろう薬草が束になっている。
「お母さん……!お父さん……!」
泣きべそをかいているその少年の両親は、
抱えている薬草でしか治せない病気にかかってしまっている。
ギャアァァアォオアォアァァッッ!!!
「ひっ……!」
少年の後ろには狼に似た生物が群を成して、
少年に襲いかかろうとしている。
本物の狼との差異はそれぞれが、
仮面のようなものをつけていることぐらいである。
世界にはこのような実在していたいないに関わらず
仮面のようなものをつけた生物が蔓延っている。
その生物たちの総称を"武獣"(タケモノ)と呼ぶ。
少年は狼型武獣の対処法を良く知っていた。
狼型武獣は特に耳が優れており、発見した場合は
その場に身を潜め、音を立てないようにするのが常套手段であった。
少年は狼型武獣をいち早く発見し、
一時はやり過ごした……が、
運が悪く足元の木の枝を踏み潰してしまい、
また、群に成熟した個体がいたため気付かれてしまった。
「あっ……!」
木の根に足を引っかけてしまった少年はそのまま崩れ落ちた。
狼型武獣は一斉に少年に襲いかかろうとし、
少年は身を屈めた。
(お母さん……。お父さん……。……ごめんなさい。)
少年は死を覚悟した。
突然、風が吹いた。
数秒経っても自分の身に何も起こらないことに驚き
顔を上げた少年の前には狼型武獣の姿はなく、
白い十字が斜めに入った黒衣を羽織った青年が背を向け佇んでいた。
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