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「んまい!!」
怜さんが口元にソースをつけながら叫んだ。
「本当ですか?
結構久しぶりに作ったんで
ちょっと自信なかったんですよ。
そう言ってもらえて本当に嬉しいです」
本心だった。
ここに来るようになってから、
俺は幾度となく料理を振舞ってきた。
繁や涼介さんに作るために
レシピ雑誌やネットを覗いたこともあった。
でも、ここに住むようになってからは、
その機会がまた増えるようになるだろう。
そう思ってはいたが、
ナポリタンは盲点だった。
ナポリタンなんて一人暮らしを始めたころぐらいにしか
作った記憶がなかった。
だから、怜さんや類さんがこうやって
おいしそうに食べてくれるのを見ると
なんとも言えない快感が心の中で生まれる。
一人暮らしをしていて良かったと思ったのは初めてだ。
俺はティッシュで怜さんの口元を
拭いながら言った。
「本当に嬉しいんです。
なんか、自分の役割のような気がして。
すみません、図々しいですよね」
だが言葉とはおおよそ逆に
聖月の顔は綻んでいた。
「でも、勝手ですけど、
嬉しいんです。本当に」
その笑顔は、出会って間もない二人が見た、
一番の笑顔だった。
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