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“manfulness”
「男の逸品」なんて言葉がある。
「グルメ」とはまったく縁の無い、「美食」なんてものにはほど遠い僕だけど、けっこう自慢できる「一品」が、本当に一つだけある。
「うへ~! マジ~」
僕は、ひとくち口にしたソイツを、すべて吐き出した。
「食べ物を粗末にしない」ことにかけては自信のあった僕だけど…
「お前が食わない物は犬も食わない」なんて言われてた僕だけど…
「なんだよコレ~」
僕は口をゆがめ、渋い顔をする。
さすがにコイツは食べられない。
夏の早朝。
東北の、とある有名な湖の近く。
国道脇の広い駐車スペース。特に駐車場の指定も、区画も区分された場所ではなかったけど、僕はそこの端にバイクを止め、生まれて初めての自炊…
つまり「ゴハンを炊く」行為…を敢行していたのだ。
でも…
林間学校での飯盒(はんごう)炊爨(すいさん)。
職場等の親睦会でのバーベキュー。
そういった場合、だいたい二つのグループに分かれる。
積極的にやる「奉行組」…
「鍋(ナベ)奉行」なんて言葉を御存知か? ようするに、「仕切りたがり」のことだ…
と、それを囲む「取り巻き組」だ。
僕は後者の方に属するタイプだったから、火でゴハンを炊いた事など、その時まで一度も無かった。
単に旅の食費を浮かすため、僕は実家の台所から大量に頂いた米をとぎ、新品のガソリン・コンロの火にかけた。
(本当は「ホワイト・ガソリン」という専用の燃料を使うのだが、バイクのガソリン・タンクから抜いたレギュラー・ガスを使えば、持ち物が一つ減る事になる)。
「料理」なんてものにはまったく興味が無かった僕なので、事前の練習は無し。
完璧な自己流で、水の量も火加減も、まったく適当・当てずっぽう。
(だいたい、食べたら無くなってしまう物に手間・暇かけるなんて、僕にはいたって無駄な行為に思えるのだ)。
『こんなもんだろ』
そう思って火を止めたのだが…
「仕方ないよな…」
芯の残ったボソボソのゴハン。僕はソイツをすべて捨て去った。
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