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俺はどうしても、あのラーメン屋にトシコを連れて行きたくて。
どうしてかって、あのラーメン屋のオバチャンとオヤジに、良いアドバイスをして貰えて、尚且つ働き口を世話してくれたお礼をしたかったから。
それから、俺の惚れた女を、二人に見せたかったから。
「美味しいね?」
「だろ?この土地に初めて来た時に、食べたのが、ここのラーメンなんだ。しかも、この二人にかなり世話になってさぁ」
二人は野暮だって言って、わざと店の奥に引っ込んだまんま。
色々話を聞いていると、生い立ちの話になった。
どうやら、トシコは本当に身寄りが居ないらしい。
だが、人間になった俺も同じようなもんだ。
漁港の総取は、たまたま街で知り合った人間らしく。
トシコの話を聞いて、世話をしてくれる事になったらしい。
「だから総取さんは、私の運命の人。ご縁って、大切にするとちゃんと自分に返ってくるもんなんだね」
「そっか」
そうだな、俺とトシコもちゃんと縁で、結ばれてんのかなぁ。
俺も、トシコの運命の人だと良いけど。
って、俺はもう、すっかり人間に気持ちまで切り替わっていた。
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