三話

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 未来の世界には鉛筆なんてなくて、小指の爪くらいの小さな石を身につけて、文章やビジュアル化したい内容を考えて文章にできるとのこと。  落とさないようにアクセサリー状にしているのが一般的だとか。 「質問文章を見て、言葉にして答えづらいことは想像してもらえればいいから」  チョコレート色の髪の男子、冬野マワタさんは穏やかに微笑みながら言って、こちらの緊張を取ってくれているようでした。 「……技術の進歩って怖い」  私はもう整っている呼吸を改めて深呼吸で整えて、目の前のガラス板モニターに向き合います。 「いつでも良いですよ」 「じゃあ、はじめるね」  モニターから3Dで質問文章が出てきましたが、はたして、これを3Dで飛び出させる必要はあったのでしょうか。  最初の方に生年月日と氏名と住所を記入する欄がありました。  思い出すだけで入力されるなんて手軽ですが、脳内ハッキングとか、嘘とかついたらどうなるんだろうとか……。 「どうかした?」 「いいえ」  過去の暮らしの資料から作成したと説明を受けた質問の内容は、私にとっては身近なことばかりでした。
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