【本編】

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”二ノ宮小学校1997年卒 6年2組クラス会のご案内”、 の文字を目で追いつつ、手元に置かれた小皿に箸を伸ばす。 拝啓 仲秋の候、皆様におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。 さて、来年は二ノ宮小学校卒業から18年が経ち私達も30才となり、皆様も多方面でご活躍されている事と… 今更、小学校の同窓会なんて、と ちいさく息をついて裏面を見るや否や、手が止まった。 幹事  1997年卒 牧田 肇 TEL 090-1234-5678 「……えっ?」 余りに予想外な人物の名前が飛び込んできて、思わず箸で掴んだ里芋がころりと小鉢に戻っていく。 「同窓会だなんて、懐かしいでしょう、ねぇ?」 「……」 主催者の名前、…牧田 肇? って。え、あの……牧田君?? 何十年前に募らせていた懐かしい気持ちが、 胸の奥からジワリジワリと、今の乾ききった私の心に沁み込んでいくみたいに押し寄せる。 ” 痛そうだな、それ ” あの時言われた彼の言葉が、フッと頭を掠めた。 「……」 どうしよう。 こうやって昔の事を思い出してしまうと無性に逢いたくなってしまうものだ。 彼は、今何をしているのだろうか。 どんな顔で…笑うのだろうか。 何処かソワソワした気持ちで、ハガキの投函日を確認する。
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