第1章

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 明るい太陽が、光り輝く。夏の午後。僕は、空を見あげて、目を細める。隣には佐藤がいる。 「おい」僕の呼びかけに佐藤は応じない。じっと、影を見つめている。 「やっぱり、お前とは、やっていけないよ」しばらくして、佐藤は、それだけ言い残して、教室に歩いて行く。静かな渡り廊下を、あいつは、背中を丸めて去っていく。ついに、残った部員は、僕一人になってしまった。試合は一人でも出場できるものの、練習相手がいない。顧問の先生は、名前だけで、テニス経験はない。僕が部長になってから、これで、二年生三人が部を辞めた。僕も、さすがに気持ちが沈んだ。佐藤は、副部長だった。一年生の頃は、あんなに仲が良かったのにと思い出し、唇をかみしめる。  強い部を作ろうと、入った新入部員には厳しくした。結果、皆やめてしまった。学校が休みの日も、市内のコートを取って練習しようと、言い出して三週間は、付き合ってくれた佐藤だったが、一回来なかった日があった。僕は当然のように怒ったのが、悪かったらしい。それ以後、土日はメールしても返事がなかった。今日、佐藤は、僕を呼びだして、三行半を突きつけたわけだ。  学校も終わり、練習のできなくなったので、駅前のスターバックスに寄り道をした。 「おう。高城」  僕が振り向くと、そこに立っていたのは、元テニス部の古木と同級生の岡島だった。 「何してるんだよ?こんなところで?」  僕が聞くと古木は暑苦しそうに制服を掴みながら空気を胸元に入れると、 「関係ないだろ」  と冷たく言った。 「そうだな」  注文していたカプチーノを受け取ると、もう口も聞きたくないと店を出る。 「あばよ」  もう関係ない。終わったんだ。  家に帰ると、テニススクールに通わせてくれるように母に頼んでみる。ビックリした母は、 「部活はどうしたの?部長でしょ?」  と言った。事情を話すと、 「お父さんに相談してみるわ」  と言う。  僕は、部屋で宿題をしようとしたが、集中できない。佐藤の言葉が、心に残っている。 『お前とは、やっていけないよ』  考えても、答えはでない。いつの間にか、寝込んでしまったらしい。ドアを叩く音で目を覚ました。  いつの間にか父が、帰ってきていたらしい。  「孝。ちょっといいか?」  父の顔はいつになく、真剣だった。僕はどきりとして、一緒に一階のリビングに降りる。  
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