6人が本棚に入れています
本棚に追加
「名前は何ていうの?君の名前は?」
逆に彼女が訊ねてきた。戸惑ってると、「恥ずかしがりやなんだね」と明るく笑った。
「私ね、ここに住んでる訳じゃなくてね、学校がお休みの間、お爺ちゃんとお婆ちゃんの家に遊びに来てるんだ」
彼女は続ける。そっか、だから同じ位の歳なのに、見かけたことがないんだ。とはいっても、僕は人家が周りにない、湖畔の傍に住んでいて、滅多に出かけないから村のことはわからないのはあるんだけど。
「いつもだったら冬休みが終わるまで過ごすんだけど、今回はパパが明日迎えに来るんだ。いつも仕事で忙しい人だから、お正月を一緒に過ごせるのは嬉しいんだけどね。せっかくお友達ができそうだったのに、残念だなぁ」
そう言って彼女は唇を尖らせた。友達って僕のことなのかな?そう思ったら恥ずかしくなって、甘酒をぐびっと飲んで誤魔化した。
「おぉい、ミライ。帰るぞぉ」
人込みの中から野太い声が聞こえ、彼女が振り返り、「はぁい」と返事した。
「もう、帰らなくちゃ。今度は夏休みに来るんだ。また会えるといいね」
おまじないと彼女が小指を差し出した。彼女の細い指に僕の小指を絡ませ、上下にぶんぶん振った。これはおまじないではなくて、約束ではないのだろうかと不思議に思った。
最初のコメントを投稿しよう!