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その子の名前はミライちゃんといった。
どんな字を書くのか、それが本当の名前なのかも確かではなかった。
ミライちゃんは母方の実家がこの村にあるらしく、毎年冬休みになると、その期間を祖父母の元で過ごしていた。
ちょっと癖のある真っ黒な長い髪に、大きな目をしたかわいらしい女の子だった。
僕がミライちゃんと初めて会ったのは十一歳の時、大晦日の夜だった。
その時の僕は、周りにいる子たちと違って、学校に行っていなかった。
ひどい人見知りで、同い年の子たちと一緒に学校生活を過ごす自信がない弱虫だった。
僕は、村の外れにある湖畔を囲む森の中に、お爺さんと2人で暮らしていて、お爺さんが先生の代わりになって色んなことを教えてくれていた。
学校の勉強や人生のことなど、お爺さんは昔は先生をしていたので、教えるのがとても上手だった。
毎年、大晦日の夜になると、僕たちは山上にある神社に初詣に出かける。
その日の夜は、お爺さんの作ってくれた蕎麦をすすり、テレビを見ながらゴロゴロして過ごす。
年が明ける前に厚着をして、外に出る。
雪深い森の中を神社目掛けて、お爺さんと2人、歩いて行く。
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