ミライ

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僕は少し怖くなり、かぶっていたニット帽を深くかぶり直して、ダウンジャケットのジッパーを口元まで上げた。お爺さんに駆け寄ると、お爺さんのジャンバーの裾をぎゅっと握った。 お爺さんは後ろを振り返ると、やれやれ困ったなという風な素振りをし、また前に向き直る。 「こんばんは」 神社へと続く階段の前には、わらわらと人が集まりだしていた。お爺さんの知り合いが声をかけたらしい。立ち止まり、世間話が始まった。 「今日は一段と冷え込みますね」 「今、何時ですか?」 「十二時五分前?今年もあっという間でしたね」 一、二、三、四……僕はお爺さんの背中に隠れるように立ち、心の中でゆっくりと数を数えた。 年が明けるまで後五分。一分が六十秒だから、60×5=300秒。僕の体内時計と除夜の鐘が鳴り始まるタイミングが合うかの実験。 五十六、五十七、五十八、五十九…… 「お孫さん?」
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