ミライ

5/39

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
来た。 ぴくりと体が強張る。お爺さんの知り合いが後ろにいる僕に気付き、声を掛けてきた。僕は俯いたまま、ぺこりと頭を下げた。 何だ、挨拶もしないのかい?と言わんばかりにそのお爺さんは眉をしかめた。 「すみません、この子は…………でして……」 「あぁ、そういう事でしたか?以前、誰かに聞いたような気がします。こちらこそ、うっかりしてまして、すみませんでした」 お爺さん二人はお辞儀をし合う。あれ?結局、いくつまで数えたんだっけ?僕実験、失敗だ。 お爺さんたちが階段を上り始めたので、僕はその後をついて行った。大人が四人は横に並べるだろう広い階段は全部で三百段程あり、初詣をするための村の人たちの列がすでに出来ていた。 僕と同じくらいの子供の声がすると、僕は緊張し、じっとスノーブーツを見つめながら、誰にも見られないように頭を下げた。 石畳の階段の脇は森が広がり、横道に逸れないように、等間隔に提灯が連なっていた。僕はずっと先まで続く提灯を見上げた。先はまだ長いらしい。 脇を見ると、まだ誰も足を踏み入れていない、銀世界の闇が広がっていた。反対に、人々が連なる石畳の階段は、解けた雪で足元はびちゃびちゃしていた。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加