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「…なあ、そろそろ帰んなきゃ、お父さん達、心配すんぞ。」
「いいの…今日は、泊まる。」
「泊まるって…。ちゃんと、そのこと言ってきたんだろうな?」
「言ってないよ…。」
「なんで?…ちゃんと、決めただろ、卒業するまでは、日付替わるまでに帰るって。」
「いいのよ、そんな約束…。」
「どうしたんだよ、いつもの香里奈じゃないよ。」
まただ…ピタッと俺に張り付くみたいに抱き付いて離れない。
「離れたくないの…透と、ずっと、一緒にいたいの…。」
「なんか、あったのか?」
「慰めてくれる?」
「う~ん、話によるかな。とにかく、話せよ。聞いてやるから。」
さすがに、抱き付いたままってのは、駄目だと思ってるんだ。腕をほどいてくれた。
そっと、俺が、体を離すと、そこには、珍しく下を向いている香里奈がいた。
「そこ座れ。」
小さく頷いて、さっきまで座っていたソファーに座り直した。
「もうね、体操のことは、諦めたはずだったのに。私、情けないの…。」
そう言った途端、香里奈の瞳から、ポタポタと、銀の粒が、幾つもこぼれ落ちていった…。
「八つ当たりしちゃったの…。
どんな顔して帰ったらいいか、わからないよ…。」
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