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暑い…朝から、本当に暑い…。
空調を入れて、部屋を冷たくしてくれてるはずなんだが、試験を受けてる俺の額からは、じんわりと汗が流れてる。
カリカリと、鉛筆の先が、紙に当たる音と、窓の外から響くセミの声しか聞こえない。
みんな必死だったんだ。たった一ヶ所のミスで、夢が遠退くのだから…。
どこの自治体でも、教職の採用数は、少ない。そこへ大量の希望者が殺到するんだから、倍率も上がると言うものだ。
なんとか、その狭い枠に、潜り込みたいと、この試験を受けてるやつは、みんな、多かれ少なかれ思っていたはずだ。
俺も香里奈も、同じ様に、教職を取っていた小野寺も、勿論、他のクラスメート達もだ。
そして、努力した甲斐は、まあ、それなりにあった。
俺と香里奈は、最終の試験まで、残ったんだから。
…けれど、最後の最後に、女神が微笑んだのは、香里奈にだった。
俺の元には、不合格の通知が来た…。
臨時を含む非常勤教員を希望する者の登録手続きについての文書が、同封されていた。
「…首の皮一枚か。」
巻き返しのチャンスは、まだ残されていたらしい。
「まあ、繋がってないよりは、マシだな。」
俺は、苦笑いしていた。
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