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香里奈の隣に、花音が座って、話をしていた。
「ねぇ、香里奈の彼氏、写真とかあるの?」
「写メなら、何枚かあるよ…。よかったら見る?」
「見せて。」
覗き込むと、そこには、大学名の入ったユニフォームで、小さなトロフィーを片手に、Vサインして笑っている透がいた。
「ねぇ、彼、アスリートなの?」
「うん、陸上やってるの。これは、去年の秋の競技会かな。
彼ね、走ることが、本当に、好きな人なの。だから、毎日、ロードワークは、欠かさないんだよ。」
楽しげに話す香里奈の表情を見て、花音は気付いたことがあった。
香里奈の表情が、前よりも、豊かになっていたのだ。
「香里奈、本当に、綺麗になったね。表情だってさ、前よりも、ずっと豊かだし。
きっと、彼氏のおかげなんだろうね。
ねぇ、彼とは、どうして付き合うことになったの?…よかったら、教えて欲しいな。」
「2年前…体操やめてからの私は、すべてに、やる気が持てなくなっていたの。そうね、仕方がないからやってる。言われたからやってる。そんな感じ…。
そんな時にね、大学の教室で、彼が、声を掛けてきたの。
何をしに、ここへ来てるのかって聞かれて、私は、答えられなかった。
彼には、見抜かれていたんだもの…惰性で毎日を送っていることも、夢も希望も失って、私の心が、空っぽになっていることさえも…。」
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