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下宿に帰ってから、奈央が、押し付けていった手紙の封を開けた。
とても綺麗な文字で、書かれていた、その手紙は、予想通りのラブレターだった。
【花澤透先生へ
私は、先生のことが、大好きです。
私は、まだ、中学生だし、先生と恋なんて、しちゃいけないんだって、知っています。
でも、先生を思うと、胸がキュンってなって、すごく苦しいんです。
先生の実習が終わって、普通の大学生に戻って、私が、中学を卒業したら、彼女にしてください。お願いします。
先生を大好きな藤咲奈央より】
俺は、それを握り締めたまま、溜め息をついた。
「初恋なんだろうな…奈央にとっちゃ。
でも、なんで、よりにもよって、俺なんだよ…。」
奈央の裏表のない笑顔を思い出しながら、俺は、また溜め息をついて、小さく呟いていた。
バタンと、ベッドの真ん中に、仰向けに倒れた俺は、溢れてきた涙を拭いもせず、零れる嗚咽を、隠しもせず、泣いていた。
奈央のこの手紙が、思い出したくない思い出を、隠しておきたい愛しさと憎しみを、俺の中から、引きずり出す…。
もう、嫌だ…。こんな気持ちを、俺は、いつまで引きずるんだ?
女々しいとか、未練がましいとかじゃない…。
俺の中には、見たくないほど、どす黒い何かが、とぐろを巻いている。
いつになったら、俺は、救われるんだろうか…。
いつになったら、幸せに、包まれるのかな…。
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