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「もうすぐだよな。ウルが神殿に行くのは」
「ええ、そうね。もうすぐ私の十歳の誕生日だから、それまでに神殿に入らないと」
いつになく沈んだ声のシェスタジヤ。
親友の横顔を盗み見て何でもないような声で返すウルア。
「神殿ってどんな所だろうな」
「さあ。何せ私達は王都どころかこの近辺を出た事がないから」
シェスタジヤが拗ねているのを百も承知でウルアは素っ気なく返す。
どうしようもないぐらいに確定された未来のことでくよくよしたくなかったからだ。
「何だよ…これじゃあ僕一人が寂しがってるだけじゃないか」
はあぁ、と盛大な溜息をついてシェスタジヤは言う。
その様子をみて思わずウルアは吹き出してしまい、当然の事として親友の恨みがましい視線を浴びる。
「ごめんごめん。でも会えなくなったからといって私達の絆がなくなるわけじゃないでしょ?大丈夫」
そりゃあ全く寂しくないと言えば嘘だけど、とウルアは付け加える。
右手の甲に刻み込まれた印を見下ろして仕方ない、とも思う。
「シェズ。どこにいても。何をしていようとも。私達はずっと友達。これは約束よ。決して違えられることのない」
そう言いつつ右手を差し出すとシェスタジヤは強く握り返してくる。
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