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「そうか…パラディンが生まれたか」
シャリアディーア国王、シグナム=シャリアディーアはそう言って王座に深く身を沈めた。
「これで…我がシャリアディーアは滅びの道を免れたな。使いをパラディンの神殿へやろう。あやつもこれで一安心するだろうからな」
王の言うあやつとはつい先ほどまで国内でただ一人のパラディンだった者の事だ。
「二ヶ月前の事件から一人で国を支えてきた英雄か…しかしもう十年待ってもらわねばならんな」
パラディンがいなくなった国は滅びる。
そんな言い伝えがある。
それを真実としないため、任務先からたった一人戻ってきたそのパラディンに王は感謝の念を持ち続けてきた。
が、今日生まれた子供が成長しパラディンの神殿へ行く事が出来るようになるまであと十年かかる。
幼いうちから親から引き離すと人格破綻者になってしまう恐れがあったため、とられるようになった措置だ。
「…十歳より以前に神殿へ入れる事も考えねばなりますまい。さてセルリア公がどう言いますか」
一般の人々とは違い、パラディンもまた人としての限界を越える事の出来ない者だということをよく知る二人は揃って考え込んだ。
英雄として祭り上げられてはいるものの、傷は負うし、任務によっては死ぬ事もあるのだ ― 二ヶ月前のように。
「難儀な事だ。民のように素直にパラディンの誕生を祝う事が出来んとは」
「しかしこれで民の不安も薄れましょう。パラディンの誕生を望んでいたのですから」
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