秋草想

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むせ返す わざと咳きで ごまかした ナナカマドの実が 色づいて 最近眠れぬ日々が 増えた 何時しか見た遠き夢は モザイクかけた蜘蛛の巣で そこには誰もいなかった 秋の長夜のように 薄い心臓の動き方 終われる日は まだ飴色ぼんやり 鏡の生物映す 私の迷宮色づいて 一滴音立て落ちるのは 血の様に染まった紅葉 さらさら風に吹かれて揺れて ガクリと膝から崩れていった まるで秋の日は釣瓶落とし 炸果状の馬酔木の果実が揺らす 酔うほどにため息は重なりあって 日没は我が儘に 沈みゆく たださ迷う人になる事なかれ
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