小鳥の羽ばたき、或いは堕ちる音

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「天海(あまみ)くん、ちょっと頼まれてくれないかな」 大学のゼミの担当教授に声をかけられたのがきっかけだった。 「知人の息子さんなんだけど、数学の成績が思うように伸びないらしくてね。家庭教師を紹介して欲しいって頼まれて。君、確か、今行ってる所、11月いっぱいで終わりって言ってたよね?」 家庭教師先が転勤のために家族で引っ越しすることになり、今のバイトが今月いっぱいで終わってしまうという話を少し前にしたからか、教授が声をかけてくれた。 「父親は弁護士で、たまにテレビにも出ているから、君も知っているんじゃないかな。君にとっても今後何かの役に立つかもしれないし、君なら僕も安心して紹介できるから」 弁護士を目指している僕にとって、それはとてもありがたい話だった。 受験が終わるまで、一週間のうち僕の都合が付かない日以外の毎晩、夜の8時から2時間。僕の都合を優先していいと言われたので、僕はそれを受け入れた。 12月に入ってすぐ、その家を尋ねるように教授から言われた。 クリスマスイルミネーションのLEDライトに街路樹が染まる夜。 僕は教授に渡されたメモを片手にその家へと向かった。
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