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「大丈夫!?早く逃げて!」
未曾有のアンデッドモンスターの大量発生に街は混乱していた。アルニカは逃げ惑う人々のために、槍を片手に奔走していた。
(あれは…)
建物の上に追い詰められた男性の姿が見える。目の前のグールに怯えきった男性は、その場に尻餅をついて一歩も動けないようだ。
「少しじっとしてて!」
という声が聞こえたと思うと、鳥が羽ばたくような音がして男性はふわりとした感覚に襲われた。死を覚悟して思い切りつぶっていた目を開けると、目の前には男性にも見覚えのある少女が立っていた。
「アルニカ!僕は助かったのか?でも、どうやってここに……」
「そ、それはいいから、早く安全なところに!ここも危ないから!」
「わかった、とにかく君は命の恩人だ!」
走り去っていく男性の背中を見送って、アルニカは大きく深呼吸をした。
(みんなもう逃げられたかしら。それにしても、こんなにたくさんのモンスター 一体どこから……?)
「アルニカ!危ないぞ!」
銃声が響いて背後でうめき声が聞こえた。振り返り槍でとどめを刺す。
「パパ!ありがとう、みんなは無事?」
「あぁ、ほとんどはな。何人かはモンスターにやられて吸血変異を起こしてる。あいつらを太陽の光で焼いて戻すためにも、早く大元を叩いて闇を晴らさなければ」
保安官が表情を曇らせる。
「明日もまた日は昇る!なんとかなるよ!」
「そうだなアルニカ。まだ街に人が残っているかもしれん。ワシはもう少し街を回ってみるぞ。アルニカも気をつけるんだぞ」
「うん、わかった!」
その瞬間、闇の気配が深まりあたりの地面がボコボコと盛り上がり始めた。
「パパ、逃げてっ!」
アルニカは思い切り保安官を突き飛ばす。地面から湧くように現れた5体のグールは、血のような赤い体をしていた。
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