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「ひっ…まだヴァンパイアが……!?」
「弱ってるぞ、今なら殺れる!」
アルニカは街の人々の形相を見てギョッとした。大きながれきを手に迫ってきたのは、ビルの上で襲われていた男だった。
「待て!その子は……」
保安官はアルニカの前に立ちはだかり、投げつけられたがれきを代わりに受けた。
「ホリーホックさん!あんた…何故ヴァンパイアをかばう!」
「この子はもうヴァンパイアではない!人間として育ててきた、ワシの娘だ!」
「じゃあそこにいるのが…アルニカだってのか!?」
「あぁそうだ」
広場に集まった人々がどよめく。
「アルニカ!?どこへ行く!」
アルニカは翼を広げて飛び立った。
どれくらい飛んだだろう。アルニカはジャンゴが太陽少年としての力に目覚めた場所に来ていた。丘の上で思い切り陽の光を浴びると、全身が灼ける感覚が数秒あって人間の姿へと戻った。夕日が沈んでいく様を見ながら、アルニカは街の人々の恐ろしい表情を思い出していた。
帰りたく、ない。
ジャンゴと戦ってこの街に一度帰ってきてから、ジャンゴは街の人達にはアルニカのことを何も言わなかったのだろう。そのおかげで今まで通り普通の人間の女の子としてこの街に溶け込めていたのだ。
みんな、笑顔の下にヴァンパイアへの憎しみと大切な人々を失った悲しみを隠していたのだとアルニカは身を持って感じたのだった。
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