第1章

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しばらく経って、保安官がやはりここにいたのか、とアルニカを迎えに来た。 「帰ろうアルニカ」 「……パパ、ケガ 大丈夫…?」 保安官は「このぐらいなんともないさ。…あいつは前に吸血変異で家族を手にかけた辛い経験があるんだ。怒りも悲しみも今まで行き場がなかったんだろう。許してやってくれ」 アルニカは少し強く目を閉じる。 「うん……ごめんね」 「アルニカが謝ることはないだろう?そろそろ冷えるから帰ろうか。 今日のスープは旨いぞ。なんてったって腕によりをかけて作ったんだ。帰った頃にはよく煮えてるはずだ。ほら、早くしないと煮詰まってしまう」 「…うん、ありがとう、パパ」 それから何日か経った。アルニカは食料の買い出しに市場へと向かった。パンやチーズ、ハムに野菜、何件かの店に顔を出す度に、アルニカの気持ちは沈んでいった。 (やっぱりみんな…よそよそしい) そこへ同い年の八百屋の息子がやってきた。 「おい、アルニカ 浮かねえ顔だな。トマトジュースやるから元気出せよ」 「えっ、いいの?ありがとう…」 アルニカは思い切ってごくごくと飲み干す。 「どーだ、うまいか?」 「う、うん、すごく美味しいよ!」 途端に周りから笑い声が聞こえる。 「ヴァンパイアがトマトジュース飲んでうまいって!!ギャハハハ!」 「血じゃなくてもいいんだー」 アルニカは顔を伏せてその場から走り去った。
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