5人が本棚に入れています
本棚に追加
しばらく経って、保安官がやはりここにいたのか、とアルニカを迎えに来た。
「帰ろうアルニカ」
「……パパ、ケガ 大丈夫…?」
保安官は「このぐらいなんともないさ。…あいつは前に吸血変異で家族を手にかけた辛い経験があるんだ。怒りも悲しみも今まで行き場がなかったんだろう。許してやってくれ」
アルニカは少し強く目を閉じる。
「うん……ごめんね」
「アルニカが謝ることはないだろう?そろそろ冷えるから帰ろうか。
今日のスープは旨いぞ。なんてったって腕によりをかけて作ったんだ。帰った頃にはよく煮えてるはずだ。ほら、早くしないと煮詰まってしまう」
「…うん、ありがとう、パパ」
それから何日か経った。アルニカは食料の買い出しに市場へと向かった。パンやチーズ、ハムに野菜、何件かの店に顔を出す度に、アルニカの気持ちは沈んでいった。
(やっぱりみんな…よそよそしい)
そこへ同い年の八百屋の息子がやってきた。
「おい、アルニカ 浮かねえ顔だな。トマトジュースやるから元気出せよ」
「えっ、いいの?ありがとう…」
アルニカは思い切ってごくごくと飲み干す。
「どーだ、うまいか?」
「う、うん、すごく美味しいよ!」
途端に周りから笑い声が聞こえる。
「ヴァンパイアがトマトジュース飲んでうまいって!!ギャハハハ!」
「血じゃなくてもいいんだー」
アルニカは顔を伏せてその場から走り去った。
最初のコメントを投稿しよう!