壁の向こうの彼女

2/20
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
◆ 『ねえ、誰か、いる?』 はじめ、僕はそれを幻聴だと思った。 ここは、他の牢屋からも遠く離れた特別な地下牢。 食事を運ぶ看守以外は、まず近寄らないような場所である。 あ、言っておくけど、僕は罪人じゃあない。 こう見えて実は、『囚われの王子様』なのだ。 ……悪かったね、『お姫様』じゃなくて。 一週間程前、僕は初めて戦場に立った。 だけど、剣も魔法も別に得意じゃないし、当然、戦果なんて上げられるはずもなく、それどころか、驚くぐらいあっさりと敵兵に捕まってしまった。 でもって、簡単に王子と素性がバレ(初陣だからって豪華な装備着けてたからなあ)、こうして人質として幽閉された、という訳である。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!