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緑と赤の二色が町中を彩る12月。
白い息を吐きながら、鼻を真っ赤にして雪が降りそうな凍える空の下、材料を買い出ししていく。
時折、幸せそうに寄り添う恋人たちとすれ違うが、――私にはそんな経験は皆無に等しい。
思えば高校の卒業式後の二次会で、お酒を飲まされ朝起きると、隣には知らない女の子が。隣の隣の隣ぐらいだったかな? 3クラスは向こうの同じ学校だが知らない女子だった。
一服盛られた俺は、――その子と寝て、大人になってしまったらしい。
まつ毛が長いだの、色が白いだの、可愛いだの、綺麗だの、男の私に女子はからかってばかりだったのでこんな展開になるとは夢にも思わなかった。男に見られていない自信なら溢れていた。
それから彼女は行方を晦まし、二年後ぐらいに俺の大学に訪れて、にこっと笑った。
『貴方の子だよ。うふふ。ごめんね、キミがあまりにも綺麗だったから』
あの時の世界が崩れていくような、180度変わってしまって色がマーブル状に溶けていくような、衝撃。
あの時以降、私は恋愛なんてものを経験することもなく、天使の様に可愛らしい彼女との子を育ててきた。
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