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「あの、胡蝶ちゃん?」
「行ってきまーす」
「パパ、待ってるから! 迎えにも行くから! ライン、既読にしてくれたら迎えに行く! 返事いらないから!」
「今日はむーり。パパもゆっくりしてね。料理は明日食べるから」
そのまま道路に飛び出すと、ナイスタイミングで来たバスに乗り込んだ。
言ってくれたら、車で送ったのに。あまつさえ、自分の綺麗な顔を武器に、胡蝶ちゃんの友達に笑顔を振りまき、女子会に混ざりたかったのに。
ソファで、ピンクのエプロン姿でしくしく泣く私は、なんて可哀想なんだろう。
クリスマスケーキも買った。チキンも焼いた。
コーンスープにカリカリのガーリックトーストも。
今年はピザだって頼んだのに。
迎えに呼び出された時の為に、氷水で冷やしているワインは開けず、胡蝶ちゃん用のピンクの子供用シャンパンを開けてちびちびと飲み始める。
寂しい。
カサリと足元に落ちたピンクの魔の手。
私の心を癒すような温かい色をしていた。
――本当に魔が差したんだ。
妻にも先立たれ、可愛い娘には遊びに行かれ、――デリヘルなんて、そんな、ちょっと、その、なんか、ね。
ドキドキしてしまうじゃないか。
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