第一部 1.

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「明日の朝早いからまた今度。 悪いな」 その今度が来ることなんてないんだけどな。 全然悪いとも思わず、 心の中で舌を出しながら、 本当に申し訳なさそうに謝罪の言葉を口にする俺。 女は不満そうだがしつこくしてくることはない。 そうなったらこの関係は終わりだと最初に伝えてあるから。 「あ、 遼くんもうすぐ誕生日だよね。 何か欲しいものある?」 俺が欲しいもの? アイツ。 「その気持ちだけで十分。 俺モノには執着しないから」 アイツには考えられないくらい執着してるけどな。 偽りの微笑みを顔に張り付けてお別れのキスをした。 外に出たらモワッとした湿気に包まれる。
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