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「あんた千紘か沙紀の場所知らない?」 すごく怒っているが返事をしたら私だと気づかれてしまうかもしれない。 黙っていると 「悪いけど、 こうしててもらち明かないから俺帰るわ」 バスルームのドアの前から立ち去り玄関へ向かう気配がする。 「待って」 考えるより先に体が動いていた。 勢いよくドアを開ける。 姿をあらわした私を見て振り返った遼の目が大きく見開かれる。 「…マリア?ウソだろ」 フラフラと歩いてきたかと思うと触れてしまうと消えてしまうシャボン玉か何かを触るようにそっとそっと遼の右手が私の頬に伸ばされる。 そして壊れ物を触るようにおずおずとその手が私の頬を撫でる。
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