31人が本棚に入れています
本棚に追加
◇◇◇
広い城内、仲間とはぐれ、この場にいるのは私ともう一人。
傷一つない、漆黒の鎧に身を包んだ"魔王"。
ボロボロの私とは対照的な"こいつ"を倒すためだけに私達は旅してきた。
国のため……
平和のため……
愛しいあの人のため…………
愛用の剣は薄汚れ、最初に手にした時の、まるで、この世の希望全てをかき集めたかのような輝きはもうない。
刃こぼれが目立つ、傷だらけの剣。
それでも、それでも私はあきらめない。
『ここはまかせて、お前はいけ!』
あきらめるわけにはいかない。
『行ってください!……後から追い付きますから、必ず』
みんなが……。
『あんたに託したからな』
託してくれたから……。
『……俺達の希望を……たの……』
世界の希望を、みんなの希望を!
「なぜだ!なぜ、そんなボロボロでまだ刃向かえる?すでに仲間はおらぬぞ!小娘一人で何が出来る!」
今まで一言も喋らなかった"魔王"がようやく口を開いた。
見た目はピンピンしてるけど、案外追い詰められてるのは私より"魔王"なのかもしれない。
私は自信たっぷりに答える。
それが、さも当然であるかのように。
いや、当然なんだ。
それが人だもの。
「私は一人じゃない。確かに今この場には私しかいない。でも、私はいつも誰かと一緒に戦ってきた!あなたみたいな孤独な王様とは違うのよ!」
そのとき、傷だらけの聖剣の刀身から光が溢れだす。
……ようやく、ようやくなのね。
「魔王、覚悟」
◇◇◇
最初のコメントを投稿しよう!