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長野県という、海なし県に生まれた私は、幼少の頃から憧れていた海のある街に、高校卒業と同時に住み着いた。
神奈川県は江ノ島。
観光地としても名高いその地は、私が思ったとおりの、マリンブルーに輝く海が素敵な街だった。
しかし、そこで私の人生は大きな変化をとげた。
小さな土産物屋さんに勤めていた私を、どこからききつけたのか、芸能プロダクションの人が女優としてスカウトに来た。
平均的な身長ではあるし、プロポーションも至ってふつう。
ただ、童顔な顔付きのおかげで、お客さんから
「可愛い」
と、評判にはなっていた。
そんな噂を聞き付けてきたらしい。
思ってもみなかった出来事、まさに天にも舞い上がるような気持ちになった私。
二つ返事で頷いて、その場で契約書にサインしていた。
……それから三年、未だに主役を演じたことはない。
が、朝の連ドラやゴールデンのドラマの端役によく出演している私は、二十代半ばにしてかなりの成功者の部類に入るらしい。
うん、行き当たりばったりにここまできたけど、私けっこうすごいよね?
……すごいと言って。
そんな、そこそこ売れっ子な私の今回のお仕事は、『一ヶ月警察署長』
至って真面目な役柄が多く、清楚なイメージ、髪型だって、基本はボブカットで染めていない。
そんな理由からの選定。
身だしなみに厳しいであろう警察にはピッタリだったらしい。
ちなみに、"一ヶ月"の理由は、『一日警察署長』は色んな人がやってるけど、"一ヶ月"は聞いたことない。
つまり、宣伝効果大。
インパクトを求めての"一ヶ月"らしい。
北海道新幹線開業に向けて、色々話題作りに余念がないみたい。
……大丈夫かしら、青森県警。
『♪~♪♪御乗車ありがとうございました。まもなく、盛岡、盛岡です。十四番線の到着、お出口右側です。この駅でこまち号切り離します。御乗車の列車は新青森行きです。お乗り間違え……』
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