第1章

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二人でゆっくり食事をしたのはいつだった? 手を繋いだのは? キスは? 最後に抱き合ったのは? 矢継ぎ早に繰り出される質問に、俺は何一つ答えられなかった。 擦れ違っていた。何もかも。 文哉に指摘されるまで気づかないほどに。 上手くいっていると思い込んでいたのは、俺だけで。 文哉はいつも待っていてくれた。 穏やかに微笑んで、仕事じゃ仕方ないよね、って許してくれていた。 それが二人の『普通』だったから。 そんな普通じゃない『普通』に慣れきっていた馬鹿な俺。 「もう待つのは疲れた。」 そう言って席を立ち出て行った。 一度も眼を合わさずに。 残された俺の目の前にあるのは、口もつけられてない冷めきったコーヒーと、俺の部屋の鍵。 為す術もない俺は茫然とそれを眺めた。 . .
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