理科の時間

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「情報、ですか……?」 「ええ、居場所や使う魔法等、分かっている事全てを教えて頂きたいのです」 「……分かりました、少々お待ち下さい」 重い表情で街長は席を立つと応接室から出ていった。しばらくして戻ってきた街長の手には紐で纏められた数枚の羊皮紙があった。 「こちらはしばらくお借りしても?」 「構いません……最初は私も何とかあれを退治しようと傭兵を雇いましたが……帰って来るのは傷だらけになり、数を半分以下に減らした兵と僅かな死体だけでした……」 「……心中お察しします」 リリアに渡された資料には数年に渡る交戦記録と年月を重ねる毎に増えていく戦死者の数が記されていた。 「そして今では資金も兵も尽き果て、この街はもう長くは持たないでしょう……しかしリリア様、それでも他の地に移民すれば私達は生きていけます、ですのでどうか止めて下され、これ以上命を無駄にしてはいけません、あれにはどう足掻こうが勝てません」 そう言って街長はリリアに懇願した。それは多くの命を無駄にしその咎の全てを負った者の悲痛な叫びだった。 「……分かりました、一先ずはこれを見てどうするかを決めます、移民の件も出来るだけ助力致しますわ」
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