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「あの、少し離れてもらえます……?」
「ふふ-、やですぅ」
英士の背中に頬を擦り寄せてだらしなく笑うリリアからは大国の王女という風格はなく、そんな彼女に甘えられている英士の表情は困惑の中に嬉しさが混ざった様な何とも言えない色に染まっている。
結局日がすっかり落ちて賢者が帰って来るまでそれは続き、その光景を見た賢者に英士は小一時間ほど慎重になるのも分かるがそろそろ男としての気概を見せたらどうだ~とか、国王やその辺等の事は自分に任せなさい等と説教をされた。
そして勇者が宿に戻り食事と沐浴を各自が済ませてから昨日と同じようにロビーに集まって明日の予定を立てる。最初にいつもの王女としての風格と凛々しさを纏わせたリリアが口を開いた。
「では、明日の行動についてですが賢者さん」
「はい、目的地はここより東に約10kmほど進んだ所にある鉱山で、少し前まではここの住人の多くがそこで働いておりました、その時に作られた坑道が魔物の住処となっているようです、移動は徒歩で明日の正午にここを出て近辺を調べてから一晩過ごし、日の出と共に鉱山へ入るのがよろしいかと」
大まかな予定を述べて賢者は何か不明な点は?と周りを見渡した。
「はい、周辺の魔物と親玉の情報は?」
「ここらにはウルフ種が少数とリゼルツリーが多い様です、親玉については不明な所が多く、このあと推測しましょう」
ウルフ種とはその名の通り狼の姿をした魔物で下級種のコモンウルフから上級種のレッドウルフ等多くの種類が存在している。リゼルツリーは大きさは様々だが幹に顔が浮かんだ動く樹木の魔物で、木に擬態して人を襲って来る。これらの魔物は単体では大したことはないが群れると非常に厄介で数によってギルドの定めているランクが1,2段階上がることもある。
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