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そして次の日、いつも通りの時間に目が覚めた英士は…隣で寝ているリリアを起こさないようにゆっくり起き上がり服を着替えた。外は顔を出した朝日に照らされて気温が少しづつ上がり始めている。英士はまだ気持ち良さそうに寝ているリリアの肩に毛布をかけ直すと静かに部屋を出ていった。
部屋を出てから英士は顔と歯を洗ってロビーで簡単な食事を摂った。そして宿の裏に停めている馬車に向かうと、がさごそと荷物を取り出して、小さめのリュックに粉末や液体が入った大小様々な瓶やその他の小物を詰め込んでいく。
「よう兄ちゃん!朝からなにやってんだ?」
「うわぁっ?!」
背後から突然かけられた大声に英士は驚き、その様子を見て声の主は腹を抑えてけらけらと笑った。
「君は……えと、シール君だよね?君こそ何で此処に?しかもこんな朝から」
「おー、ちゃんと名前覚えてくれてたのか
!勇者様御一行に名前を覚えてもらえるなんて光栄だぜ」
「ちょっと待って、なんで僕達が勇者一行だって知ってるの?」
「そりゃああんなお人好しで、このご時世に少人数で旅なんてしているの勇者様一行くらいだぜ、それにすこし前に近くの街で勇者が来たって噂もあったしな」
「な、なるほど……」
「それより勇者パーティーにいるって事は兄ちゃん強いんだろ?ちょっと来てくれよ!」
「えちょ、わっ?!」
袖を掴むとシールは問答無用とばかりに英士を引っ張り、町の外れへと走っていく。体勢を崩した英士は無理矢理走らされ、まぁ昼頃までに戻ればいいかと思いそのまま着いて行く。しかしシールの背で踊る剣を見て頭に少しの不安がよぎった。
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