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シールに連れるがままに街を出て、森の中を進んで行く。空気が涼しい季節ではあるが体にはじんわりと汗が滲み、脚には少しずつ疲労が堪っていく。
途中英士は何度かシールに何処へ何をしに行っているのかという質問をぶつけたが、シールは笑みを浮かべたり「いいから着いて来てくれよ」と言って答えをはぐらかした。
少しずつ時間は過ぎていき、余裕を持って時間までに宿に帰るためにはこれ以上先には行けそうにないと判断した英士が、引き返そうとシールに声を掛けようとした直後、辺りに低い呻くような声が響き渡った。
「っと、兄ちゃん伏せろ」
言われた通り、英士は音をなるべく立てないようその場にしゃがんだ。同じように身を小さくしたシールは手で近くの茂みを指差すとゆっくり移動し始めた。
「兄ちゃん静かに、良く見てな」
そう言ってシールは顔を茂みに押し付けるようにして前を見た。別に茂みからわざわざ顔を出さなくても先にある景色はそれなりに見ることが出来る。体の輪郭は隠され、しゃがんで全く動かなければ直ぐ側まで近付いても、なかなか気付かない。(この時寝そべると少し上から見たときの面積が大きくなり、逆に見つかりやすくなる)
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