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茂みを飛び越え、行く手を邪魔する木の枝を交わしながらシールは考える。水のある所といえばこの辺りでは川か湖しかない。この状況でそんな所に行ってどうするのか?
水系統の魔法を使う者ならば水を操って魔法の威力を底上げしたり魔力の消費を抑えたり出来る。しかし側で走っている青年は魔法は一切使えないと言っていた。それなら残る選択肢は逃げる事だ。リゼルツリーの体躯ではまず湖も川も渡ることはできない。
この状況で確実に逃げれる手段を即座に思い付くのは経験やそれなりの知識が必要なはず、そういうところを買われて兄ちゃんは勇者の仲間にいるのかも知れないとシールは思った。
「はぁーっはぁーっ!!ゴホッまだ、着かない、の」
「はぁっはぁっ!、もう、ちょっと、だ!」
呂律が回らなくなるほどに息の上がっている二人の視界の先に、立ち並ぶ木々に阻まれた日の光が見え出す。最後の力を振り絞って足に力を込め、二人は森を飛び出した。
「よし、兄ちゃん、ケホッ早く逃げ、る…………」
シールが目にした物、それは干上がり、今は少しばかりの水が流れる元は大河であった小さな小さな河だった。
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