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「おい、お前に客が来てるぞ」
――仕事が終わりかけた午後19:45分。
こんな地方じゃお目にかかれないような、高級車の修理に胸をときめかせ、残りは点検だけだと車体の下にもぐっている時だった。
「客?」
「寒田 馨(さわだ かおる)さんって人」
「さわだ? かおる?」
誰?
頬に付いたオイルをタオルで拭き取りながら首を傾げた。
聞いたこともない。
「お前、もう上がれ。俺があとは見といてやるから」
なぜか、熊みたいな親父さんの表情が険しい。野生の熊みたい。
「お前」
「何?」
「避妊って言葉は知ってるよな?」
「……」
何を突然言い出すんだ。このじじいは。
セクハラか?
セクハラに眉を顰めながらも、休憩室のドアを開けた。
「あーうー」
「……」
バタン。
休憩室に、見知らぬ女云々じゃねぇ。ちっさい何かがいたぞ。
ついドアを閉めてしまったじゃねーか。
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