九言、雷也。

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やる気は感じられず、気だるげな雰囲気の演奏。 真面目な審査員はそこで眉を潜めるだろう。 でも彼は演奏したどの子供より魅力的で美しい表現力だった。 そんな危なっかしい彼に興味が持てた。 ――独りで頑張ろうと健気に笑う太陽に重なったのかもしれない。 彼を助ける事で、太陽に会えない心の隙間を埋めようとしたのかもしれない。 「君はピアノが嫌いですか?」 入賞の小さなトロフィーを、ロビーのゴミ箱へ捨てている雷也を見つけ、そう話しかけた。 「大嫌い。惰性で弾いてやってるだけだ」 「何で?」 「授賞したいなら、とセクハラしてくる奴等が多い。おっさんもおばさんもだぜ?」 「ではウチの事務所に入りませんか? セクハラ無しとピアノを弾かないで済みますよ」 スカウトとしてはどうなのかと思うが、雷也にはこんな息苦しい世界は似合わないと思う。 「んー? まぁそうだよなぁ。じゃ、その方向でいくなら俺、したい事があるんだよね」
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