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「おい、椿、いつまで泣いてるんだ!」
髪をわしゃわしゃ撫でると、体操座りでちょこんと泣いていた椿が俺を見上げる。
「だって、ちあきせんせい、おれとけっこんするってやくそくしたのに」
六歳になった椿は、そんな事で泣くまで成長していた。
だが、千秋は俺の昔の女だとは口が裂けても言えない。俺も良い親に成長した。
「千秋先生が結婚して仕事辞めるのはさびしいけどさ、今までいっぱい世話になったんだから、綺麗にお別れしてやるのも、良い男だぜ? お前が最後まで泣いてたら千秋だって笑顔になれねーじゃん」
「なんで?」
「千秋先生は、椿も好きだから」
「すきなやつをなかせるのはかっこわるいってぱぱもいってたもんね」
「言った。好きな奴を泣かせるような男は男じゃねーよ」
その言葉に椿は涙を拭き、テーブルへ向かう。
やっと、千秋先生への似顔絵のプレゼントへ手を伸ばしてくれた。
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